力学的バランス
モーメントの基礎的現象(図1~3参照)
細長い矩形のバーが自由空間に存在しているとする。バーの中心に支点Pを設け、バーはこの固定した支点Pを中心に自由に回転できるものとする。(図1)。次に、バーの左端を力点Kとする。今、力点Kと支点Pを結ぶ直線を考え、a-a’とする。このa-a’によって上下2つに分けられた領域ができる。上側をCゾーン(右上りハッチ領域)、下側をUゾーン(右下がりハッチ領域)と名づける。初期状態では、このバーは静止しているものとする。いま、図2のように力点Kに力Fを力点KからCゾーン内に向かうようにかけるものとする。図中に示されるように、力Fがいかなる方向を向いていても、Cゾーンに向かう方向でさえあれば、静止していたバーは支点Pの回りを時計回りに回転し始める。回転を始めさせないためには、作用点Aに図のような向きに力Rをかけてやらなければならない。一方、図3に示すように、力点Kにおける力FがUゾーンに向かう向きにかかる場合には、バーは反時計回りに回転を始める。これを阻止するには、作用点Aに、図2と逆向きで同一の大きさの力をかけてやらなければならない。このように、一般的物理現象として、支点と力点を通る直線によって分けられる2つのゾーンを考えることによって、力点における力の向きがいずれのゾーンに向かっているのかを知れば、その物体が支点の回りにどちら向きに回転するのかを一義的に示すことができる。
T字型物体に発生する現象(図4~8参照)
矩形の代わりに、T字型の物体を考える(図4)。1.と同様の原理で、支点Pと力点Kを設け、2つの点を延長した直線をa-aとする。このとき、a-aの右上部分がCゾーン、左下がUゾーンとなる。ここで、力点Kに力Fをかける。力の向きは力の延長線が支点Pの上側を通るように、かけるものとする。図に示されるように、力FはCゾーンに向かう力であるから、このT字型物体は時計回りに回転を始めることになる。しかし図5に示すように、このT字型物体を対称な位置に全く同条件でもう一つ設け、同一の力Fを対称位置の力点にかけることによって、回転を抑えることができる。このとき、作用点Aには2つのT字型物体が互いに及ぼしあう力Rが発生する。この力Rは明らかにT字型物体が押し合う力である。
このような状況は、図6に示すように、クリップの2つの部材T1とT2にY字型の補助部材(Y)を取り付けた状態で実現することができる。クリップの先端(作用点Aに相当)における摩擦力はクリップ部材間の力Rとは直角方向であり、Rの増減には与しない。先端に発生する力Rのかかり方を詳細に見ると、図7のようになる。つまり、クリップ部材T1と補助部材Y間、およびクリップ部材T2と補助部材Y間に働き、大きさはいずれもRである。力Rの大きさを求める方法。図8にしたがって、下記のように求められる。R=Fd/(L/cosθ) (>0)
補助部材の形状が異なる場合(図9~13参照)
図5では、単純に力点Kに力Fをかける場合を仮定したが、図9では、力を与えるストリングが一旦作用点Aに引っかかってからT字型部材にそって力点Kに到達している場合を考える。つまり、力点Kに外力が加わるだけでなく、作用点Aにも力がかかるという場合である。すなわち、作用点Aも力点の一つとなる。力点Kにかかる力FがCゾーンに向かうのは明白であり、時計回りの回転に寄与することになる。一方、力点A(=作用点A)と支点Pの延長した直線c-c’を考えると、図10に示すように、Cゾーンはc-c’の下側、Uゾーンは上側となる。なぜなら、力点Aにおいて上向きの力は反時計回り、下向きの力は時計回りの回転をもたらすからである。ストリングの内部張力は全てFであるが、点Aにおいてストリングの方向が変化しているために、点Aからの角の二等分線方向に力Gが発生し、ストリングからT字型物体に及ぼされる。力Gの向きは、Uゾーンに向かっているために、反時計回りの回転に寄与する。したがって、力点Kにおける力Fによって作用点Aに発生する力Rと、力点Aにおける力Gによって作用点Aに発生する力Qを総合した押し付け力が発生し、この押し付け力は、R―Qである。このような状況は、図11に示すように、クリップの2つの部材T1とT2に補助部材(X1、X2)を取り付けた状態で実現することができる。
先端に発生する力のかかり方を詳細に見ると、図12のようになる。つまり、押し付け力(R-Q)は、X1-X2間に発生する力であり、X1ーT1間およびX2-T2間では依然として同一の力Rが作用している。したがって、Y字型補助具でもX1X2型補助具でも押し付け力は全く同一であるといえる。力Rと力Qの大きさを求める方法。図13にしたがって、下記のように求められる。R=Fd/(L/cosθ) (>0) Q=G cos(θ/2)=2Fsin(θ/2)
総合評価
ここで論じた押し付け力は、初期状態としてばねの反発力で既に与えられている押し付け力とは独立に、付加的に発生するものであり、補助具は押し付け力を増加させる効果を持つ。

